蒸したもち米をあんこで包んだ和菓子と言えば、「おはぎ」または「ぼたもち」ですよね。
どちらも見た目には全く同じものにしか見えませんが、なぜ呼び方が違うのでしょうか?

じつはおはぎやぼたもちは、「夜船」や「北窓」といった呼び方をされることもあるのよ。

え~!!
なんでそんなに、いろんな呼び方があるんですか!

日本というのは、とても季節感を大切にする国よ。

特に和菓子の世界では、ひと月ごとにその月を表す和菓子があったりして、季節感やちょっとした言葉遊びを含めて名付けられているものが多いの。

あっ!
例えば、春の桜餅とか?

そうよ。
おはぎやぼたもちも同じく、季節の花が由来なの。

つまり、作る季節の違いによって名前が変えられているってことね。
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おはぎとぼたもちの由来

おはぎとぼたもち、見た目からは全く「花」って感じがしませんけど、どんな花が名前の由来なんですか?

見た目に捕らわれずに考えれば、すぐにわかるはずよ。
秋のおはぎ【御萩】

おはぎ…はぎ…

あっ!
もしかして、「萩の花」ですか!?

正解よ。

萩は小さなピンク色の花が咲くんだけど、それが小豆でできたおはぎによく似ていたことから、「御萩(おはぎ)」と名付けられたの。
漢字の「萩」には「秋」という字が入っていることからもわかるように、萩の花は秋(9月から10月ごろ)に一番の見頃を迎える花です。
おはぎはお彼岸のお供えに使われる和菓子ですが、秋のお彼岸は9月にある秋分の日の前後7日間。
ちょうど萩の花が美しい時期に作られる和菓子なので、秋に作られるものをおはぎと呼ぶようになったのです。

おはぎって、こういっちゃなんだけどちょっと野暮ったいイメージがありましたが、由来を聞くとなんだか風流で上品な食べ物に見えてきました…。

和菓子は味や見た目に加えて、名前の美しさも魅力の一つね。
春のぼたもち【牡丹餅】

これもわかりました!

ずばり、「牡丹の花」ですね!

そうよ。
牡丹は萩の花とは違って大輪のピンクの花だけど、これも小豆色をしたぼたもち全体から連想して「牡丹餅(ぼたもち)」となったの。
秋のお彼岸で供えられる「おはぎ」に対して、「ぼたもち」は春のお彼岸で供えられます。
牡丹は春に咲く花で、開花時期は4月から6月ごろ。
春のお彼岸は3月なので、ちょっと勇み足ではありますが、牡丹の花が咲く春に作られるものを「ぼたもち」と呼ぶようになりました。

ただの「あんこの塊」にしか見えなかったぼたもちに、きれいな牡丹が重なって見えます…!

日本人らしい感受性が、磨かれてきたわね。
夏の夜船【よふね】

春はぼたもち、秋はおはぎってことは、それ以外の季節はなんて呼べばいいんですか?

夏の場合は、「夜船(よふね)」と呼ぶわ。

夜船って、花の名前には思えないし…
一体、どんな経緯でこの名前がついたのか、全く想像がつきません。

夜船という名前は、とっても面白い言葉の連想ゲームから来ているの。
↓
いつ搗いたか分からない
↓
いつ(船が)着いたかわからない
↓
(着いたのがわかりづらい)夜の船

こんな流れで、夜船という名前がつけられたのよ。

めちゃくちゃ風流ですね!?

現代人が忘れてしまった、「雅」というものを思い出させてくれる気がします。
冬の北窓【きたまど】

冬の場合は、なんて呼ぶんですか?

冬の場合は「北窓(きたまど)」と呼ぶわ。

あ~これも夜船と同じで、きっとものすごく風流な言葉遊びが隠されているんでしょうね。

そうね。
北窓も、かなり素敵な連想ゲームになっているわ。
↓
搗き知らず
↓
月知らず
↓
(月が見えない)北の窓

ぐわーっ!!!
素敵すぎて、感受性揺さぶられまくります…!

ほんと、こんな発想ができる人になりたいものだわ。

う~ん…私にはハードルが高い…
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おはぎとぼたもちの違い
おはぎとぼたもちは、基本的には同じものです。
しかしおはぎとぼたもちでは、少しだけ大きさや形、あんこの種類などに違いがあるってことを知っていましたか?
大きさと形の違い

萩の花と牡丹、色こそ似ているけれど、大きさや形はあまり似ていないわよね。

萩は小さなく細長い形ですけど、牡丹は丸い大輪の花ですね。
萩の花と牡丹を見比べると、形や大きさが全く違います。
そこで、おはぎとぼたもち、それぞれ萩の花と牡丹を模して、おはぎは小さめで俵型に、ぼたもちは大きめで丸い形に作られることが多いのです。

言われてみれば、おはぎは一口サイズの小さいものが多いような気がします。

個人的には、握りこぶし大くらいのデーン!!としたものが好きですけどね。
あんこの種類の違い
あんこに使われる小豆を収穫する季節は秋。
収穫したばかりの小豆の皮は柔らかく、皮ごと食べることができますが、春ごろには皮が硬くなってしまっています。
そのため、昔は秋のおはぎに使われているのは皮ごとつぶした「粒あん」、春のぼたもちに使われたのは皮を取り除いた「こしあん」でした。
このことから、今でもおはぎには粒あんを使い、ぼたもちにはこしあんが使われているケースが多くあります。

そうは言っても、こしあんなのに「おはぎ」って名前がついていたり、粒あんでも「ぼたもち」として売られているものもあるわ。

私は粒あん派なので、おはぎでもぼたもちでもいいから、とにかく年中、粒あんのほうが食べたいです。

あっ、でも、あんパンだったらこしあん派です。

粒あん派・こしあん派の話は戦争が起きかねないから、今はやめときなさい。
その他さまざまな違い

大きさ・形・あんこ以外にも、地域やお店によって、おはぎとぼたもちの違いはあるのよ。
・もち米を使う→ぼたもち
・お餅状のもの→ぼたもち
・あんこで包む→ぼたもち

しかもどちらをどう呼ぶかが、逆になっていることもあるわ。

つまりぼたもちだと思ったらおはぎだった、おはぎだと思ったらぼたもちだった、ということも多いんですね。

「お汁粉とぜんざいの違い」に近いものを感じます。
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まとめ
おはぎとぼたもち、どちらも基本的には同じものですが、作る(食べる)季節やちょっとした作り方の違いによって、ここまで呼び名が変化する食べ物って、他にはないですよね。
実際に自分が住んでいる地域ではどう呼ばれているのか、季節ごとに地元の和菓子屋さんを覗いてみるのも面白いですよ。