ジュースやミネラルウォーターなど、様々な飲み物がペットボトルで販売されている中で、ずっと紙パックでの販売がメインとなっている「牛乳」。
なぜ牛乳だけは、かたくなに紙パックでの販売が続けられているのか、不思議に思ったことはありませんか?実は牛乳が紙パックで売られているのには、意外な理由があったんです。
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紙パックとペットボトルの違い
普段なんの疑問もなく紙パック入り牛乳を買っているという人も多いでしょうが、紙パックとペットボトルでは、使い勝手が雲泥の差です。まずペットボトルの利点としては、
・蓋ができる(開封後も持ち運べる)
・密閉できる(長期保存が期待できる)
などが挙げられますね。それに対して紙パックでは、
・蓋ができない(開封すると持ち運べない)
・密閉できない(保存期間が短くなる)
など、ペットボトルに比べると不便な点がいくつもあります。なぜあえて不便な紙パックが使われているのか、ますます謎ですよね。
牛乳が紙パックで販売される理由
牛乳がペットボトルではなく紙パックで販売され続けるのは、
・衛生面
・コスト
・法律
主にこの3つが理由です。
衛生面を考慮
牛乳は脂質・たんぱく質・ミネラル・炭水化物・ビタミンなど、様々な栄養が豊富に含まれている飲み物です。その反面、その栄養を元にして雑菌が繁殖しやすい飲み物でもある、ということ。
ペットボトルと言えば、直接飲み口に口を付けて飲んだり、そのまま蓋をして持ち歩いたりできるというのが利点ですよね。しかしそれは、牛乳という雑菌が繁殖しやすい飲み物にとって致命的。
・開封後は持ち運びしづらい
という紙パックのデメリットは、牛乳を雑菌から守るうえではメリットでもあるのです。
もしも牛乳がペットボトル入りだったら…きっと常温で長時間持ち歩いたり、直飲みしたものをそのまま放置したりしてしまう人も多いのではないでしょうか。
コスト面での課題
牛乳をペットボトルで販売するための大きなハードル、それは設備を導入するためのコストです。これまで紙パックが主流だったわけですから、ペットボトル牛乳を販売するためには、ペットボトルに牛乳を充填する機械やその他もろもろの設備を、全く新しいものに変えなくてはなりません。
また、ペットボトル自体のコストも、紙パックよりは上です。牛乳は日常に密接している飲料ですから、たとえ10円以下の値段の上下でも、消費者にとっては気になりますよね。
法律で決められた条件
じつは牛乳をどんな容器で販売するのかは、法律によって決められています。現在ではペットボトルもOKなのですが、法律制定時にはペットボトルそのものがまだ存在していませんでした。そのため、後にペットボトルが登場した際には、法律的な条件を満たしていなかったのです。
しかし後々ペットボトルが飲料容器として主流となってきたため、平成19年に法律が改正され、法律上はペットボトル販売に問題はなくなりました。
とはいえ、すでに長年紙パックで流通していたことで「牛乳=紙パック」というイメージが強く根付いたため、なかなかそのイメージを覆すことができていません。実際、海外の牛乳などは大きなボトルに入って売られていることが多いですが、それを見ても「なんか牛乳っていうより洗剤みたいに見える」と違和感を覚えたことがある人も多いのではないでしょうか。
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世界の牛乳の容器事情
じつは牛乳を紙パックで販売するというのは、世界的に見れば少数派。多くの国では、プラスチック製のボトルや瓶で販売されています。どうして日本とは異なり、世界では牛乳に紙パックが使われていないのでしょうか。
その理由は、「輸送」にあります。日本は国土がそれほど広くないので、たとえ北海道から沖縄だろうとも、それほど輸送に時間はかかりません。しかし国土の広い国の場合は輸送に時間がかかるため、あらかじめしっかりと殺菌された、消費期限の長い牛乳が主流なのです。紙パックではどうしても保存性や堅牢性に劣ってしまうため、あまり紙パックが普及しなかったのではないかと思われます。
また、保存性を高めるためしっかり殺菌しようとすると、どうしても味や風味は落ちてしまいます。牛乳に保存性よりも新鮮な美味しさを求める傾向が強い日本とは、事情が異なるということです。